ボクハカンチョウデス

お二人連れのご高齢のご婦人方のお客さまが退館なさる際に、たまたまロビーに居たボクに話しかけてこられた。

「タクシーを呼ぶには、どうしたらいいかしら?」

「今日はどちらからお越しになられたんですか?」

「O市からです」

「隣県のO市から。それはそれは、遠いところ、交通の便も決して良くないのに、わざわざご来館いただきありがとうございました」

そこからひとしきり、「今日は来てホントによかった。楽しかった」など、さんざんお褒めのコトバを頂戴し、感激した。

85歳なのだそうだ。シャンとしたたたずまいやお話の仕方からは、70前後にしか映らなかった。

ふとしたきっかけで、今まで日常で目にしていながら気づかなかったことに興味を持ち、当館のことを何かで知って、遠方からご来館いただいたらしい。

「アレは、どこ行ったら買えますかねぇ?」

「アレ。あぁ・・・うちの職員の手作りでよければ、差し上げましょうか?」

「えっ。いただけるんですか?」

お二人に、とある手作りの紙製のチープな品をお渡しすると、ことのほか喜んでくださり、小学生のように目を輝かせながらニコニコ顔でお帰りになられた。

お二人を見送りながら、とてもココロがあったかくなるのを感じた。

いくつになっても、新しいことに興味を持ち続けることができたら、人生は楽しい。
そして、そんな方々のためにも、ボクの仕事の意義があることを改めて思い知らされ、力をいただいた気がした。


ボクは、昔から一人ぼっちの泣き虫弱虫で、しょっちゅう独りでつまずいては泣いていた。それは、今も変わらないのだから、未熟なオッサンと揶揄されても返す言葉が出ないのだが、こうして時々、自分のしていることの意味を見ず知らずの方たちに教えられ、『しっかりしないといけないよな』と、また立ち上がるきっかけを与えてもらっている。


ボクの仕事は、いつも誰かの笑顔とヤル気と尽きない好奇心につながっている。

だから、逃げずに、ちゃんと向き合いたい。仕事からも。私事からも。

ボクハカンチョウデス。

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