寄り添うこと

 目覚まし時計のアタマを押さえ込み、寝ぼけまなこを薄く開ける。
 視界の端に、何やら黒い塊が蠢めくのを感じる。
〝Gか?〟
 ぼんやりと考える。
 部屋の真ん中、床にいくつもの黒っぽい塊が集まっているみたいだ。
〝石くれ?〟
 手のひらに握りしめられそうなサイズの小石が、ばらばらと一か所に転がっていた。

 ベッドに起き直る。

 確かに、小石だ。二十個ばかり?
 なんで?
 どっから来た、コイツら?
 右の壁が、微かに軋む。

 ?!

 天井にほど近い位置で、異様な突起物が、壁を突き破って覗いていた。
 石くれは、その破れ目からこぼれ落ち、部屋の真ん中あたりに転がっていた。

 慌てふためき、廊下に出て、階段上の明かり取りの窓から外を見る。
 いつのまに出来たのか、隣家との境に建てられた巨大な鉄柱が我が家に向けて傾ぎ、二階の壁を貫いている。

 唖然。呆然。空いた口が塞がらぬ。

 家族に知らせようと、階段を降りかけたところ、サイレンが鳴り響いた。


 二度目の目覚め。


 我が家は無事だった。


 昨日に続いて、疲れが抜けない朝。
 仕事に行くのが憂鬱だけど、ボクの代わりはいない。


 同情することと、寄り添うことは違うのだと、歳を重ねるたびに強く思うようになった。
 あなたが出来ることを、ありのままに受け止める。
 なかなか割り切れないのは、自分の甘さか?

 朝から、ぼんやりと考えているうちに、またしても、無為に時間だけが飛び去っていくのだった。
麦わら倶楽部

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