そう言えば、あの夜も雨だった

Yさんが短期のアルバイトに来たとき、ボクは20代後半だったっけ?

瞳のキレいな、アイビー・スタイルが似合う、健康的なお嬢さんって感じのコだった。

ま、ひとめぼれ、かな?

Yさんの仕事の指導は、ボクと仲の良い先輩女性だったので、いろいろ間に入ってもらって、グループだけど、何度か遊びに行ったり、その帰りに家まで車で送ったりしたんだが、さして伸展はなかったんだな。

そうこうするうち、Yさんのアルバイトが満了になった。

最後に決心して、告白するつもりで、晩ごはんに誘った。

2軒目のカクテル・バーで、向かい合わせの席に座って話をしたが、彼女の目線はついにボクの顔に向かうことはなかった。

何も言い出せないまま、既に敗北感でいっぱいだった。

明日用事があるから、そろそろ帰るとYさんが言うので、思い切って、交際してほしいと伝えた。

Yさんの返事は、何とも言えない、苦い味がした。

店を出ると、冷たい雨が降っていた。

迎えに来た車にYさんは乗り込み、ボクは雨の中、傘も持たずに立ち尽くした。

しばらくして、恋の行方を野次馬半分ながら気にかけてくれていた友人に、電話した。

『おおっ! どうだった?』

『ひとり。今、駅前にいる』

『そっか。ザンネンだったな。雨降ってるから、送ってやるわ』

電話を切った後、自分の不甲斐なさに、涙があふれてきて仕方なかった。



多分、自分が傷つくのが怖くて、自分のことばかり、自分を守ることばかり、考えていた。

Yさんのことを、しっかり見てなかった。

結果ばかり気にして、その時々の交流を楽しむことができていなかった。

思い出してみて、全然変わってないな、さっぱり成長してないな、と思う。

今からでも、ボクは、変われるだろうか?


♪涙して濡らした心はまた強くなって
苦しくても 例え息苦しくても
諦めず突破
(SHOCK EYE作詞、℃-ute『アイアン・ハート』)


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